不夜城 半端者のサバイバルストーリー

 

不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)

 

 



 

不夜城の文庫本を最初に手に取ったのは大連にある漫画喫茶だった。落ち着いたカフェの雰囲気の店内でかつ丼が美味しかったのを覚えている。たまに日本食と活字が恋しくて何度か行ったのを思い出す。

 

 

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お食事 & 珈琲 散歩路 | Whenever大連ローカル


その時は読まずに、また今度来た時に読破しよう、なんて考えていたと思う。その時に24時間営業の「不夜城」というボーリング場があり、禍々しいネオンと夜にはディスコ然とした場内が想起され、孤独を痛感する自分に戸惑いを感じた。結局また、は訪れず最初に存在を知ってからかれこれ10年経った。

 

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観光情報 - 新着観光情報-大連不夜城ボウリング場

 

漫画喫茶もボーリング場も今はもうないらしい。
読み始めたきっかけは何気なく見ていた「作家の読者道」と、お盆の時間だ。結果不夜城、レクイエム、長恨歌と一気に読んだ。グイグイ引き込まれた。読後も余韻も長く、しばらく作品の世界観から抜け出せず気だるさを感じていた。

 

 

 

 

 

俺に祖国を想う気持ちがあるとしたら、それは崔健の声の中にある

 


あるとしたら…に集約されるどこかハスに構えたところと、祖国=アイデンティティ。シリアスで、敏感な心の柔らかい部分を表現したギャップがかっこいい。また一人の歌手にそれが集約されるなら切なくも感じた。

 


結局、対象が何回か変わっただけで、俺の人生には常に怯えと憎悪がつきまとったいた。あんまり長いことつきまとわれていているので、自分がなにかに怯え、それを憎みながら生きているのだということを忘れがちになるほどだ。

 


ネガテイブなことを言っているが、どこかパワーをもらえるような一文。吐き捨てるように言っているからだろうか。

 


「100%の日本人か金持ちでなきゃ、幸せになれない国だからな、ここは」

おれは答えた。血だけじゃない、言葉、受けてきた教育、見ていたテレビ番組、そういうものが1%欠けただけで、異邦人として扱われるのがこの国なのだ。

 

ごもっともです。

 

「この世の中にはカモるやつとカモられるやつの2通りしかないんだってことさ。自分のアイデンティティがどうだのといったことに頭を悩ますやつは一生誰かにカモられるだけだ。だから俺は悩むのをやめた。カモることに専念したんだ。」

 


至言です。

 

 

不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)